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寂滅のボジョレー

たまたま立ち寄った居酒屋で、今日はボジョレーヌーボーの解禁日なんでワインをふるまいますよ「ウーン、ボジョレー!」という店員の奇声とともにワインが運ばれてきた。
すでに日本酒を注文していた僕は、赤と白の液体が入ったグラスを2つ目前に並べて、初めてサークルの飲み会に参加した阿呆な大学一年生みたいだった。

ウーン、ボジョレー!

店員の高笑いとともに、ワインが客にふるまわれていく。
そして日本酒とワインを交互に飲みながら、ますます僕はみじめに小さくなっていく。

相性の悪い二つの酒はお互いの味を殺し合い、「アルコールである」という唯一の共通点で和解してタッグを組んで、今度は僕を殺しにくる。
酔いがいやらしく回ってくる。
隣に座っていた男に話しかけても会話ははずまず、僕以外のすべての人間はボジョレーの住人であった。

ボジョレーで騒ぐ理由が分からない。というか、お祭りのように皆で集まってはしゃげれば別にボジョレーじゃなくても良いのかもしれない。

ハロウィン、クリスマス、スポーツ観戦、、別になんだって良いんなら鮎釣りの解禁日に浜崎あゆみの曲を爆音で流しながら魚の着ぐるみで川に飛び込んだって良いのだ。

さあ、一緒に飛び込まないか。

と言った所で、そもそもそういうノリに付いて行けなかった自分なので、人に呼び掛けるという事は出来ない。
ひと気のない川面に巨大な鮎が浮かんでいたとしたら、それは僕だと思ってください。そして千の風、千の風になってあの大きな空を吹きわたっています(秋川談)

翌朝、早朝に目が覚める。
室内に違和感を感じる、窓が薄いピンク色に染まっている。
外に出てみると、燃えるような朝焼けが頭上に広がっていた。

ボ、ボジョレー、、

噴き出した血のようなその赤で、すべてを燃やし尽くしてくれ。
人を絶した自然の狂騒、孤立無援の祭りは続いていく。



by shiitakesentaku | 2020-11-29 09:56 | 2020年11月


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