人気ブログランキング | 話題のタグを見る

フローラル

近所のドラッグストアでトイレットペーパーが安売りしていた。
普段買っているペーパーよりも若干浮ついた感じのパッケージデザインに躊躇したが、値段に負けて買ってしまった。

「サンスタイルカラー・花束の香りつき」

家に帰り包みを開けると、そこにはピンク色した謎の巻物がぎっしりと詰まっていた。
サスペンス映画で言えば、扉を開けたら部屋中血だらけ、のシーンである。

「ぎゃああ、どすピンク、、」

我が家にそのような悪質なピンク色の物体がかつて存在したことはなく、異星からの侵略者なみのインパクトである。
そして花束というよりもむしろ、花っぽさを無理に演出したケミカル臭であるがゆえに否応もなく公衆便所を想起させる香りを致死的に放出している。

お家に帰りたい、、しかしここは、お家なのであった。

買ったものはしょうがない、使うしかない。とトイレットペーパーホルダーに装着したが、なんとも収まりが悪い。
トイレットペーパーホルダーに感情があるわけ無いのだが、明らかに不服な顔をしている。
いや、背後から拳銃を突きつけられながら「この人は友人なんで何も問題ないですよ」と無理やり言わされているような顔の硬直状態、緊張感なのであった。

このような悪質行為が行われている空間にはもう行きたくない。
しかし、行かざるを得ないのだ!

私は極力ペーパーを見ないようにして、わんこ蕎麦をこなすような感覚で必要以上につるつると多く消費しようと努めていた。
なんでこんなに頑張らなければならないのだ、日常の、何気ない、一コマで。私は、穏やかな生活を、所望する、

我が家の個室が悪質で残虐なケミカル・ファンシー空間になってしまったのかと思うとなんとも落ち着かない。
そしてもし友人が来ようものなら「こんなペーパーを使うとは酷く日常のバランス感覚を喪失した、センスの死滅したとんだクソ野郎だ」と思われかねない。と想像すると落ち着かなさは倍々に増していく。

最近読んだ本に「私たちはパンだけでなく、バラも求めよう。日常にバラを」みたいな一説があったが、バラにも様々なバラがあり、自分に合ったものをその都度選び取っていかなければならない。

このような日常を侵食する食人バラは、求められるべきではなかった。
使う人によっては福音をもたらす至福のバラにもなり得たかもしれないが、私とは住むべき場所が違ったのだ。

とはいえ様々な生物が混在する地球において、私たちは共生していかなければならない。
食人バラよ、出会ってしまったからにはしばらく運命を共にしよう。
でもしみったれた事を言ってしまうけど、そんなに色気づかなくて良かったんだよ、ありのままの、君でいて欲しかったなぁ、って言っても木の皮の状態とちゃうで、もうちょっとこう、なんか、トイレットペーパーらしさってあるやん、え、それも私の身勝手な押し付けっていうんかいな、








by shiitakesentaku | 2018-11-23 17:21 | 2018年11月


<< 念仏を唱えるようにチャリを漕ぐ 荒廃した都市に駐禁の風が吹く >>