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伊豆へ

先日時間があったので、バイクで伊豆半島を一周してきました。

まず気になった伊東市にある大室山に立ち寄る。
この山は、お椀をうつぶせに置いたような、こんもりとした珍妙な形で、山頂までロープウェイに乗って到達できる。

山頂では、このかつての火山の縁をぐるりと一周することが出来るが、そこから下った噴火口のところに何故かアーチェリー場があって、色々考えてしまう。
こんな所でも金儲けがしたいのか、いや、この圧倒的な自然の力強さの中で、アーチェリーのように人間がコントロール出来る一つの法則を置いておいて、感覚のバランスを保とうとしているのか、等々。

そのことがずっと引っかかっていたので、家に帰って語源の辞書をめくってみると、「室」という漢字は、弓矢を射って、その落ちたところに祖先を祀る霊廟を建てる、という形からなっており、なるほどと思った。

大昔の壮絶な噴火、それは大地からほとばしる激烈な弓矢で、それに射られた場所に山が出来た。
そこでアーチェリーをするのは、気軽にその土地の神様を祀る行為なのだ、と。

山頂をぐるりすると、なにか人の業を表している気がした。人は回り続けるのだ、それも徒歩で!
噴火口を挟んで反対側の縁に、小さく見える人が連なって歩いている様は、シルクロードを行くキャラバンのようにも見える。
そしてあちらから見ると、僕もその遠景のキャラバンの一つなのであろう。ああ、因果、

下山すると、近くにある「まぼろし博覧会」へ。
ここは秘宝館のような、あやしい博物館で、駐車場の前で、ビキニを着て綾波レイのような髪型をしたおっちゃんが旗を振って客引きしている。
なかなか人を選ぶ施設である。

展示内容は、昔のポップな文化をマネキンやグッズで再現しているもので、「風姿花伝」という世阿弥の言葉を思い出した。
人は風のように生きては死に流れていくものだけど、その時々に変わらず花は咲く、といったほどの意味で、いつの時代にも華やかな流行や魅力的な人・物は存在する。

そのようなものへの愛着が、いつまでも花を咲かせたまま存在させ続けよう、と圧倒的な物量で具現化しているところに、とても感嘆しました。

その後、雲見温泉にある烏帽子山に登る。
巨大な岩の上に建った神社で、その景色は圧巻でした。
もののけ姫のだいだらぼっちの上に乗っているような気分で、見下ろす家々に巨大な岩の影が映り、ひき潰しちまえ!といった気分にもなります。
ただ山頂までかなり急な道を40分ほど登らないといけないので、かなり体力を削られます。

この神社は烏帽子山である、いわながのひめのみことを祀っていて、彼女の妹は富士山である、このはなさくやひめのみことであります。
綺麗な妹と違って容姿が醜い姉で、ににぎのみことに二人とも嫁に差し出されたのに、姉だけ帰されて、しかもすでに子供を宿していた、という事を知って、神様、やることやってんじゃんかよぉ、となんとも煮え切らない気持ちになりました。

帰り際に日帰り温泉に入ろうとしたのですが、メジャーどころは人が多いに違いない、とマイナーそうな温泉に入ったのが、それが、間違いでした。

入口では大学生の30名ほどのグループがバーベキューやらなんやらで、ロビーまで騒然としていて、宿の者がどこにも見当たらない。
ようやく、ウォーリーを探せのような感覚で、宿のおばちゃんを見つけたのですが、まったく反応の鈍い感じで、あぁ風呂に入るの、とそっけない調子。
そこで僕はひるんでしまった。まるで歓迎されていない感じで、行く先の不穏な未来を感じ取ってしまったからだ。
かといってもう陽も暮れ始めていて、他の日帰り温泉を探していたら暗くなって帰り道が心細い、ということで決断してその風呂に入ることにした。

風呂場の扉を開く、そこはよくある民宿のような広さの大浴場で、外に出るドアーが奥に付いている。すなわち、露天風呂があるのだ。
さっそく外にでて、海も近いのでオーシャンビューとしゃれこもうじゃないか、と期待に胸を膨らませていると、、、そこから見えるのは、直近の民家のベランダであり、洗濯物であった。

露天風呂であることが、開放感をもたらし、温泉との相乗効果でさらなる癒しをもたらす、といったことは微塵もなく、その開放感が、逆に利用者の首を絞めている、というシステムであった。
えぇい、重要なのは温泉だ、とふっ切れて温泉に勢いよく足を突っ込むと、つるん。
と、盛大にずっこけてしまった。
浴槽の床が、掃除をされていないせいでコケが生えて、ヌルヌルとしていたのだった。
ずばん、と温泉にぶっ倒れ、アクアリウムのようにコケはプカプカと水面を漂う。

私はそっと目を閉じて、彼方まで広がる雄大な太平洋を想像した。
人間には想像力がある、それは人にとって大いなる希望なのだ。

刻一刻と陽は暮れていく。
ここからの帰り道は、まだまだ遠い。

せめても、せめてもこの瞬間だけは、現実を逃避させてくれないか、







by shiitakesentaku | 2017-08-11 14:51 | 2017年8月


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